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突然ですが短編の更新です(中年映像作家のおやじが美青年を愛でる話)

2017/ 05/ 29
                 
突然ですが、短編小説を仕上げたので更新します。
ここ数回の更新は散文以上小説未満、のような流し書きを更新してきましたが、それを書くうちに思い付いて突発的に仕上げました。パブー掲載予定の「BRIGHT」よりもこちらの方が先で申し訳ありません(´ー`A;)※BRIGHTもほぼ完成し残り細かな直しのみになりました。

今回掲載の作品はBLというより「初老おやじ×美青年」というド濃い内容になっております(笑)
当ブログは管理人が個人的基準で性的な表現に制限を設けており(年齢確認できない、検索に突然ひっかかる可能性を踏まえ、いわゆるキスまで止まりとし、それ以上のものはパブーに掲載としています。あくまで当ブログ基準で一般的にブログに性的表現が不可というわけではありません!)

で、今回試そうと思ったのはその基準内で極限までエロすにしたいという事です(笑)かなりマニアックな自分で制限してその中で限界を試すみたいな試みなのですが、どこまでやれたのかは力足らずゆえ…しかし頑張りましたので楽しんでいただけたら幸いです。

では前置きはそこそこに以下追記欄から作品となります(記事は3つに分けて小連載形式となります)
※ちなみに長編に継続可能なように脇役などもチラつかせてあり多少不自然な点お許し下さい。


「人の愛し方」
~HENTAI中年映像作家Hと駆け出しの役者理人(りと)の話~


            

「最高の作品になりそうだ」

橋山はそう言って、無骨な太い指で挟んでいたスケッチ用の鉛筆をキャンバスの台座に置いた。

「疲れただろう。楽な姿勢にしていい。後は見ないでも仕上げられるから」

椅子の背もたれを細い脚で挟むようにして本来とは逆向きに座り、背もたれに肩肘をついて手の平に顎を乗せていた青年、森下理斗(もりしたりと)は無表情をそのまま視線だけ橋山の方に向けると、体勢を緩めた。

「見ないでも仕上げられるものなんですか?」
理人はそう言うと片手を頭上に伸ばし、動物が伸びをするようにそれをさらに真上に持ち上げて細い体を反らした。
見た目にはそこまでの負荷がかかっているようには見えなくても、長時間スケッチのモデルをするのは撮影に慣れている理人に取っても辛いようだ。

「そうだね、僕ぐらいの画家であれば、頭の中にあるイメージはかなり強固なものだから」
橋山は鉛筆ではなく灰皿に置いてあった煙草のパイプを手に取り咥えた。
「…特に美しいものは忘れられない」
そう言うとパイプを咥えた反対側の口角を僅かに上げた。顎に生えた白髪混じりの髭は乱雑に伸びているように見えて、不潔さは感じられない。よく見ると、敢えて不揃いに切りそろえられているのがわかる。

橋山眞一(はしやましんいち)、世界的に活躍する写真家、兼画家、そして映像作家でもある。
メインの活動は写真家で、人物写真に興味がある人間であればおそらくその名前を知らない人はいないだろう。
キャリアは長く、著名週刊誌の表紙を10数年連続で撮り続けている。
橋山に撮影してもらいたいという人間は尽きず、著名人からの個人的な仕事の依頼は絶えない。
彼が撮影した作品に被写体が人形のように微笑む写真は皆無で、被写体の持つ素の表情が生々しく写真に捉えられる。
写真だけでなく絵画の評価も高く、最近では国内外で個展を開き成功を収めた。

「…モデルの依頼を受けてくれて心底うれしいよ」
橋山は目を細めて煙を吐き出すと理人を見つめ僅かに微笑んだ。
会話していると穏やかな口調で忘れてしまいそうになるが、橋山の眼光は鋭い。口元の笑みと、細めた目の奥で理人を捉える瞳の鋭さには差異がある。理人は何か背中に冷たいものが這うような感覚に襲われた。…これは恐怖なのだろうか?

「こちらこそ、ありがたいです。橋山さんの作品のモデルになりたいという人は後を絶たないと。僕みたいな駆け出しの役者が声をかけてもらえるなんて」
理人はふとよぎった気持ちを悟られまいと饒舌に振舞った。何か話していないと橋山には何もかも見抜かれてしまうような気がした。



橋山が、理人を初めて見たのは、映像作家としてある人気女性ミュージシャンのビデオクリップを手がけた時だった。
楽曲に合わせたドラマ風の映像を制作するにあたり、曲のイメージを損なわないよう無名に近い青年を使いたい、というレコード会社からの希望があった。

そのオーディションに応募してきたのが高校を卒業してから家業を手伝っているという20歳の理人だった。

橋山は3人いる選考員の中の1人として、面接会場の室内にいた。

無名の役者と言っても、最終選考に残るような人間は既に芸能事務所に所属している場合も多い。
妙に熟れた笑顔で選考員らの質問に応えていくまだ少年のあどけなさを残す青年たち。
顔つきも皆似たように見えた。最近では整形はもはや当たり前で、不自然な2重も不自然とは思えなくなるほどありふれている。
…これなら自分が街中に出て「普通」の青年をスカウトした方がマシだな。10人目の面接中にそんな思いに襲われた。

もし納得がいく人材が見つからなくても、レコード会社の予定で再選考はできない。橋山自身のスケジュールも詰まってる。
透明感のある楽曲のイメージからは程遠い、商品のように加工されたニヤけた青年を数日に渡り撮り続ける。
…惰性という名の下での創作活動か。
橋山は他人にわからないよう小さく溜息をついた。

そんな中で理人と初めて対面した。

理人がドアを開け部屋に入ってくると、これまでの弛緩した空気がどこか変わった。
最初は何故だかわからなかったが、椅子に向かい歩く理人の姿勢や物腰が美しいのだと気がついた。まるで武道家のように隙がなく取り囲む空気が静まり返っている。

自分の名前を述べ一礼し顔を上げた理人と目が合った。
逸らすことなく真っ直ぐに自分を捉える理人の前にすると、なぜか自分が審査されているような気持ちになった。
瞳に澱みが全くない。

(こういう目をした人間がいるのか)

カメラマンとして多くの人間を見つめてきた橋山がそう思った。
書類のプロフィール欄を読むと、新幹線に乗り1人で東京までやってきたのは初めてだという。

理人は尊大な態度というわけではないが、有名プロダクションの幹部や自分を目の前にしても動じない、ある種のふてぶてしさのようなものも感じさせた。

「緊張はしないの?」
自分の右側に座った楽曲のプロデューサーが、理人に質問した。
「すみません、あまりにも状況がのみ込めなくて。緊張もできなくて…でも、これが東京なんだなって。わくわくしてます」
理人はそういうと少し微笑んだ。
視線が橋山の方に動き目があった。作為ない笑みだ。

両サイドから吹き出すような笑い声が聞こえた。
少しポイントがずれたような理人の答えが場を和ませた。

「演技には自信があるの?演劇部か何かに入っていたのかな」
橋山が質問した。
理人が真顔になる。
「演技はしたことがないです」
「では何でここに?」
「…演技はしたことがないけれど、容姿に自信がありました」
理人は表情を変えず真顔で答えた。切れ長の目だが黒目がちなせいかきつい印象は受けない。

「面白いね」
左に座る芸能プロダクションの社長が感心したような声で言った。
「なぜそう思うの?」

「姉がそう言うんです。姉は、…人気アイドルグループの追っかけをしてるんですけど…」
理人は一瞬目線を斜め下に向け迷いを顕にしたが再び正面の面接官たちを見つめた。
「整形してないのにその顔なら芸能人にならないとダメだって」

「...つまりほとんどの芸能人は整形している、か」
橋山がそう言って笑った。
芸能プロダクションの社長もおそらくは気まずそうにニヤけているだろう。

「はい、僕は本当か知りませんけど…そうだって。それで…つまり書類を用意してオーディションに申し込んだのは姉です」

理人は慌てて早口になるわけではなく淡々と答えた。
その声には独特の抑揚があった。理人の出身地が東北であり、慣れない標準語で話しているせいかもしれない。
聞いている人間に不思議と心地よさを感じさせた。

「じゃあ君自身は、特にビデオクリップにも出たくないし、役者にもなりたくないの?」
曲のプロデューサーが質問する。

「いえ。応募したのは姉ですけど。やりたくなかったらここには来ません。僕の資質を最大限に生かせる仕事があるなら、やりたいです。…僕の実家の家業は果実園だから…」

そこまで一気に話すと理人は黙った。

「虫除けの網にその顔を隠して一生を終える」
橋山が代わりに続けた。

「そうです」
一瞬目を伏せた理人が橋山を見つめて答えた。
「…好きだからいいんですけど…果物作り。でも」

「勿体ないね」橋山が続けた。

「そうですか?」

「キミのお陰で、惰性で仕事をしないで済みそうだよ」
理人は橋山の言葉の意味を全てはわかりかねたようで、きょとんとした顔をしている。
「皆さんはどうです?」
橋山は体を軽く引いて左右の選考者に問いかけた。
「いいと思う。橋山さんがそう言うなら間違いはないので」
楽曲プロデューサーがそう言った。

「僕も意義はない。ただ…選考会はこのまま続けますよ。何千人の中から選ぶと公募しているから」
プロダクションの社長が続ける。
「時間の無駄だが仕方ない」
その声は満足そうだ。

「…というわけだ。理人くん」
橋山がまとめた。理人はポカンとしている。
「自分の事を容姿がよいと抜け抜けと答えた人間は初めてだ。資質を生かしてくれ。君はこれから実を結ぶだろう。御両親は悲しむかな」

「いえ喜ぶと思います。…ただ…」
理人の顔が僅かに曇った。
「僕も整形するんですか?」

橋山は吹き出した。
そしてすぐに真顔になった。
「いや、その必要はない。自然の美は神の意思なんだ。それに手を加えるなんて愚の骨頂だからね」
そう言って髭の生えた片側の頬をわずかに歪ませた。

理人は顎に手を置き自分を見つめる橋山の目の奥に吸い込まれるような錯覚を覚えた。表情は柔和だが自分を見据える目は鋭い。
今まで出会ったことのないタイプの人間だと思う。

「神の意思だよ」
橋山が続けた。理人は橋山の話についていけず面食らった様子で沈黙した。すると橋山の表情がほどけたように笑顔になった。

「撮影が楽しみだ。理人くん」


~②へ続く~


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